秋の2等星

秋の星座には1等星がひとつしかない、という表現は、まあよく言われることだからあまり深入りするつもりはない。2等星の話をしよう。
2等星は、1等星に比べるとあまり目立たない。暗いということではない。話題にされにくいということだ。1等星だと、星座の話のときにはかならず登場する。みなみのうお座をフォーマルハウトなしに語る人、いないでしょ?
ところが、2等星は語られるほうが少ない。
秋口の星座としてつる座がある。これは、みなみのうお座の少し西にあるので、今時分だと夕方日が暮れたときに南に低く南中している星座になる。
マイナーだけれど、2等星は2つもある。というか、フォーマルハウトを見ようと南の空に目を向ければ、その右下にぽつんぽつんと明るい星が並んでいるのがわかる。雲があったらだめだけれど。これがつる座のα星とβ星だ。

もう少し時間を進めて、今度はみなみのうお座の東側。やっぱり、ぽつんと明るい星が目を引く。ほうおう座のα星だ。
どれも2等星だから、そんなにわかりにくいはずではないのだが、あまり語られることがない。ほかに明るい星がない、というのならみなみのうお座だってそうだから、まあ2等星だと話に出しにくいのであろうな。つる座α星はアルナイルという名がある。一方β星は特に名前が知られていない。別に明るさとしてはアルナイルとたいしてかわらないのだが、まあこういうこともあるのであろうな。2017年にポリネシアのトゥアモトゥ諸島で使われているティアキという呼び名が正式に採用されることになった。やはり南の星座は南の地方のほうが親しみがあるようだ。

ほうおう座α星はアンカアという。別に古風な感じでアンカーと書いたわけではなく、Ankaaというつづりなのである。アラビア語でほうおうの意味。
アラビア語で星の名前がついていると、昔からあるように見える。しかし、ほうおう座は近世になって作られた星座である。どういうことなのよ?と思う向きもあるかもしれないが、これは近世になってから「それっぽく」呼ばれるようになったもの。1800年くらいになってからの呼び名なのだ。もっとも、アラビアでもワシとかダチョウにたとえられていたこともあったようではあるが。
いっぽうわからないのはつる座。こちらも近世になってから新たに作られた星座なのだが、中国でもだいたいつる座と同じ範囲をもって「鶴」と呼ばれていたようである。確かに小さく羽を広げたような形はそれらしいといえばそれらしいのだが。本家?のアラビアでは、もともとはみなみのうお座がこの辺りまで伸びていたようだ。